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スタチンはクロマチン構造変化を介して内皮細胞のKLF4遺伝子を誘導する

高脂血症の治療薬として広く用いられているスタチン系薬剤には、血中LDL-Cholesterol(LDL-C)低下作用以外にも抗動脈硬化的に働く作用があることが知られている。今回東京大学アイソトープ総合センター(センター長、児玉龍彦)の神吉康晴助教、和田洋一郎教授は、東京大学先端科学技術研究センターシステム生物医学分野の前島崇司(まえじま たかし)研究員(現、興和株式会社)と井上剛(いのうえ つよし)研究員(現、東京大学病院腎臓内科、バージニア大学)、大田佳宏特任准教授、井原茂特任教授、児玉龍彦教授らの研究グループと共同して、スタチン系薬剤が直接内皮細胞に作用し、クロマチン構造変化を介してターゲット遺伝子発現を調節していることを見いだし、これが従来考えられていた抗動脈硬化の一端を担っている可能性を示した。本内容は、2014年5月5日付でPLoS One誌電子版に掲載された。
 研究チームは、動脈硬化病変初期における血管内皮細胞の役割に着目し、スタチンによる血管内皮細胞の遺伝子発現変化を詳細に解析した。スタチン系薬剤の一種であるピタバスタチンを用いたトランスクリプトーム解析により、臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)においてKruppel like factor(KLF) familyに属するKLF4, KLF2の発現が最も増強させること、その間MEK5/ERK5/MEF2シグナル経路を介していることを明らかにした。特にこのなかで、転写調節因子である抗MEF2C抗体による免疫沈降と次世代シーケンサー用いて(ChIP-seq)、スタチンによるKLF4の転写制御機序について解析した結果、KLF4転写開始点より上流148 kbpの領域にMEF2C結合領域があり、この領域がスタチンによるKLF4の発現に必要であることを明らかにした(Figure 1)。さらに、クロマチン相互作用をchromosome conformation capture (3C)およびThree-Dimensional Fluorescence in Situ Hybridization(3D-FISH)によって解析したところ、スタチン刺激によりKLF4転写開始領域と148 kbp上流の領域エンハンサー領域が空間的に近接することを明らかにした(Figure 2)。
以上のことから、スタチンによる抗動脈硬化は、脂質低下だけでなく、直接内皮細胞の遺伝子発現を調節していること、また、そのときタンパクのリン酸化といった既知のシグナル伝達経路だけではなく、クロマチン構造ダイナミックな変化も関与していることを明らかにした。

 尚、本研究は、興和株式会社、システム生物医学ラボラトリーゲノムサイエンス部門、大阪大学、木村宏博士、シンガポールゲノム研究所、コネチカット州立大学ジャクソンラボラトリー、自治医科大学、興梠貴英博士、総合研究大学院大学、田辺秀之博士、および東京農工大学、遠藤章博士との共同研究である。

Direct Evidence for Pitavastatin Induced Chromatin Structure Change in the KLF4 Gene in Endothelial Cells

Takashi Maejima*, Tsuyoshi Inoue*, Yasuharu Kanki, Takahide Kohro, Guoliang Li, Yoshihiro Ohta, Hiroshi Kimura#, Mika Kobayashi, Akashi Taguchi, Shuichi Tsutsumi, Hiroko Iwanari, Shogo Yamamoto, Hirofumi Aruga, Shoulian Dong, Junko F. Stevens, Huay Mei Poh, Kazuki Yamamoto, Takeshi Kawamura, Imari Mimura, Jun-ichi Suehiro, Akira Sugiyama, Kiyomi Kaneki, Haruki Shibata, Yasunobu Yoshinaka, Takeshi Doi, Akimune Asanuma, Sohei Tanabe, Toshiya Tanaka, Takashi Minami, Takao Hamakubo, Juro Sakai, Naohito Nozaki, Hiroyuki Aburatani, Masaomi Nangaku, Xiaoan Ruan, Hideyuki Tanabe, Yijun Ruan, Sigeo Ihara, Akira Endo, Tatsuhiko Kodama†, Youichiro Wada†

*; These authors contributed equally to this work.
†; To whom correspondence should be addressed.
#; Correspondence for RNA Polymerase II antibody

 

 


Figure 1. 抗MEF2C抗体を用いたChIP-Seqの解析結果
 KLF4 転写開始点より上流148 kbpの領域にMEF2Cが結合する。



Figure 2. Three-Dimensional Fluorescence in Situ Hybridization(3D-FISH)を用いたスタチン刺激によるKLF4転写開始点と148 kbp上流の領域のクロマチン変化の解析結果
 スタチン刺激前に比して、スタチン刺激によってKLF4 転写開始点と148 kbp上流のエンハンサー領域が空間的に近接する様子を示している。

 

 

 


 
   
最終更新日: 2014年5月15日