東京大学アイソトープ総合センター Isotope Science Center,The University of Tokyo

 2017年4月からセンター長に着任いたしました。これまで本学構成員の一人としてアイソトープ総合センターにお世話になっておりましたが、今度はセンターの中から皆様をサポートする立場となりました。至らぬ点も多々あるかと思いますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 東京大学アイソトープ総合センターは、平成27年に英語名をIsotope Science Centerへと改め、放射性同位体だけでなく安定同位体も含めた広い意味でのアイソトープ全般に関わる教育と研究を行っています。本センターにはいくつかの重要な任務がありますが、学内外の放射線取扱者への教育訓練は我々の最も重要な仕事であると認識しております。本学は国際化の流れを受け、多くの外国人の方々が在籍しております。放射線取扱者への教育訓練をこれまで以上に強化する一方、講義の多言語化やe-learningによるオンデマンド化など利便性を向上する試みも進めてまいりたいと考えております。本センターの機器および施設を学内各部局の研究者の共同利用に提供することも重要な使命です。今後も本学構成員の方々の研究にセンターを利用していただくとともに、将来的には各部局のご要望に応じて放射線利用施設の集約化も進めていきたいと考えております。ところで当センターの教員による特徴あるさまざまな研究が展開されております。なかでも半減期が短く、飛程が短いα線核種を用いた医薬品をがん治療へ応用する研究は、今後の発展が大いに期待されるものです。また、2011年3月の原発事故で被災した地域へ教職員を派遣し、復興支援や啓発活動にも取り組んでおり、今後も社会貢献活動の一環として継続していく予定です。
 当センターは学内センターとしての重要な役割だけでなく、全国の大学とも連携した放射線関連の研究教育施設の拠点として先導的な役割を果たしていく所存でおります。今後とも皆様の御支援と御協力を賜りますようお願い申し上げます。

東京大学アイソトープ総合センター長 鍵 裕之
内科循環器病学、分子生物医学、放射線生物学
研究内容

血管システムにおいて重要な役割を果たす内皮細胞が、低酸素、変成脂質、炎症刺激などの環境に適応するメカニズムを有していることは、マイクロアレイを使って網羅的に遺伝子発現を比較することによって明らかになっています。そして、虚血性心疾患の原因となる動脈硬化などの疾患は、この適応現象が破綻することによって引き起こされると考えられます。近年クロマチン免疫沈降と超高速遺伝子シークエンシングの組み合わせによって、この背景には遺伝情報をコードしているデオキシリボ核酸(DNA)がヒストン蛋白に巻き付いてできた染色体のダイナミックな変化が起こっている事がわかりつつあります。私達も、DNAからリボ核酸(RNA)を作り出す、“転写”を担うRNAポリメレースが遺伝子上に結合する場所を網羅的に観察しています。その結果、従来大腸菌で語られていたRNAポリメレースがDNAの上を滑りながらコピーを作っていくモデルではなく、ほ乳類ではRNAポリメレースが沢山集まっている“工場”にDNAが取り込まれてRNAが作られるというモデルを提唱しています。そして、この“転写ファクトリー”の実体を明らかにすること、そして細胞の中心にある細胞核内で遺伝情報を巧妙に詰め込んだ染色体が刺激に応じて示す挙動を明らかにすること、という問題に取り組んでいます。私達は様々な領域、国籍の研究者と力を合わせて、解像度の高い顕微鏡でもいまだ見ることができない生命現象の根源的な世界に、最新の実験手法と情報処理の力で挑んでいます。

分子生物学、生化学
研究内容

環境変化に対して適切に応答することで生物は長い年月を生き抜いてきました。そのため、生命現象の本質の一つは、環境中の多様なストレスに対して適切に応答することであると言えます。また、ストレスに対する応答異常は疾患とも密接に関係していることも分かってきています。したがって、細胞のストレス応答の研究は、生命科学において最も重要な研究分野の一つと言えます。
私の研究室では、熱、病原体、放射線などの様々な環境ストレスに対する細胞レベルの応答を分子生物学・生化学的手法やオミックス解析手法を用いて研究しています。特に、RNA結合タンパク質とRNA(ノンコーディングRNAとmRNA)との相互作用を基盤にした、遺伝子発現の制御に注目した研究を行っています。

質量分析、プロテオミクス、エピゲノム、バイオマーカー、翻訳後修飾
研究内容

私たちの研究室では質量分析計を用いてプロテオミクス、エピゲノミクス、薬剤探索などのタンパク質を標的とした様々な研究を行っています。
プロテオミクスではNano-LC/MS/MSによる微量サンプル(精製品pg程度または混合物中)のタンパク質の同定・定量や、抗体による濃縮法を組合わせた複合体解析、バイオマーカー探索を行っています。
エピゲノミクスでは最新鋭の高分解能質量分析計Orbitrap Fusion-ETD (Thermo Scientific社製)を用いてエピジェネティクスに重要なヒストン修飾の生物学的意義を明らかにするため、修飾組合わせの解析技術を研究しています。
またMALDI-TOF MSを用いては、エピゲノムを決定する酵素に作用する薬剤探索や臨床応用を目指した簡易診断技術開発を行っています。

助教 垰 和之
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分子生物学
研究内容

細菌リポ蛋白質は、N末端のシステインが脂質で修飾された蛋白質で、その脂質を介して細胞膜に結合しています。
大腸菌にはおよそ90種類のリポ蛋白質が存在しており、細菌の表層構造の形成、形態維持、物質輸送など様々な役割を担っています。リポ蛋白質は細胞質で合成され内膜を透過し、内膜上での脂質修飾、シグナルペプチド切断等を経て成熟体となります。リポ蛋白質の多くは外膜に局在しており、それらは内膜に存在するABCトランスポーターLolCDE複合体により内膜から遊離し、ペリプラズムのLolAに受け渡され、外膜まで輸送されます。
私たちは、Lol蛋白質による外膜へのリポ蛋白質の輸送と、その不全により引き起こされる細胞表層ストレス応答の機構について研究しています。

放射化学、放射線安全管理学、環境関連化学
研究内容

放射線の利用には原発事故などの負の側面があります。しかし、有益な面も多い放射線を、より有効にかつ安全にさらに合理的に利用できるよう放射化学的なアプローチから研究を行っています。例えば、放射性のヨウ素-131は、核医学において甲状腺癌の治療に使用されていますが、投与後の放射性廃液を一般排水へ放出できる濃度の限度が極めて低く、半減期が8日とやや長いため病院での治療頻度を容易に向上できないことが問題になっています。これを廃液中から回収すれば頻度が向上します。回収に適した物質や条件と探索などの研究に取り組んでいます。

また、平成23年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故後から、環境中に放出された放射性物質の挙動の解明に取り組んできました。得られた成果が、すぐに人の役に立つことを目指して、また、環境の安全安心な状況への回復に寄与したいと考えて研究を行っています。

助教 杉山 暁
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タンパク質工学、特に抗体工学、放射免疫治療
研究内容
私は放射性核種を用いたがん治療方法の開発をしています。
放射性核種を用いてがんを治療するにはためには副作用を最大限抑えるために放射性核種を的確にがん細胞へ届けることが必要になります。
そのため、私は抗体工学を利用したドラッグデリバリーシステムを研究開発しています。
エピジェネティクス、転写、血管生物学、クライオ電子顕微鏡
研究内容
先進国の死因の上位を占めるがん、動脈硬化、心血管疾患、脳血管疾患などはいずれも血管内皮細胞の機能が深く関与しています。我々の研究は、こうした現代の死因の大部分を占める疾患に対する臨床研究的な側面と、血管内皮細胞をモデルとして高等真核生物細胞の転写を明らかにする基礎医学的な側面を持っています。
臨床研究においては、動脈硬化や固形腫瘍における血管新生をターゲットにした研究をゲノム、エピゲノム変化の観点から行っています。 次に、基礎医学的側面ですが、私たちは世界に先駆けて血管内皮細胞における発現、ヒストン修飾、転写因子の結合に関して次世代シークエンサーを用いて明らかにしました。更に最近では、最新のクライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析により、癌代謝の酵素や核内エピゲノム修飾因子の立体構造解析を米国NIHにて研究しています。
特任助教 桂 真理
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眼科学・分子生物学・放射線生物学
研究内容

日本人は自然界で生活している間に、平均2.1ミリシーベルトの被ばくをします。これまでの研究から、150ミリシーベルト以上の被ばくをした人は統計学的に発がんのリスクがあがることがわかっていますが、100ミリシーベルト以下の低線量放射線は、疫学研究でその影響を調べることが困難です。
そこで、私は低線量放射線が人体にもたらす影響について、培養細胞や実験動物を用いた研究から理解することを目標に研究を進めています。この研究を始める前、私は眼科の臨床医をしていました。眼科の治療技術は急速に進歩している部分と、なかなか解決できない問題との両方を併せ持っています。その中でも、網膜や神経といった神経組織は一旦障害を受けけると回復が困難です。放射線の研究では、障害を受けた細胞や組織がどのように死んだり回復したりするのかを知る手がかりが得られると考えています。

  •  アイソトープ総合センター 所属者一覧
  • Update 2017/11/8

○センター長
 鍵 裕之

○教授
 秋光 信佳
 和田 洋一郎

○准教授
 川村 猛

○助教
 神吉 康晴
 杉山 暁
 垰 和之
 桧垣 正吾

○特任助教
 小野口 玲菜
 桂 真理
 田久保 直子
 中田 庸一

○特任研究員
 小林 美佳
 近藤 有里子
 田口 明糸
 近岡 洋子
 戸澤 英人
 中山 綾
 LEE SUJIN
 石川 夕記子(短時間)
 吉田 涼子(短時間)
 和田 裕美(短時間)

○客員研究員
 日本原子力研究開発機構 石﨑 梓
 自治医科大学附属病院医療情報部 興梠 貴英
 東京大学先端科学技術研究センター 児玉 龍彦
 Genomedia株式会社 谷上 賢瑞
 元・東京大学アイソトープ総合センター 野川 憲夫
 元・東京大学アイソトープ総合センター 山本 一樹

○協力研究員
 東京大学医学部付属病院糖尿病・代謝内科 青山 倫久
 千葉大学大学院薬学研究院・学振PD 今村 亮俊
 日本写真印刷株式会社事業開発部マーケティングG 小尾 奈緒子
 (株)バイオシス・テクノロジーズ 坂倉 幹始
 日本写真印刷株式会社 染原 俊朗
 株式会社Rhelixa 仲木 竜
 東京医科歯科大学難治疾患研究所 東島 佳毅
 (株)バイオシス・テクノロジーズ 福田 哲也
 聖マリアンナ医科大学分子病態情報研究講座 藤井 清永
 ヤマト科学株式会社 三木 陽太
 明治薬科大学 山田 俊理
 東京大学医学部付属病院眼科 吉岡 啓
 Genomedia株式会社 大野 愛子
 無所属 藤井 智世
 ヤマト科学株式会社 土屋 正年
 ヤマト科学株式会社 加藤 太輔

○大学院生・研究生等
 東京大学大学院薬学系研究科 小倉 瑶子
 東京大学医学部眼科学教室 小野 久子
 明治大学大学院理工学研究科 藤井 健悟
 国際基督教大学教養学部 森井 志織
 東京大学大学院薬学系研究科 HAN HAN
 東京大学大学院薬学系研究科 Sun Xiaoning
 東京大学大学院薬学系研究科 Tanzina Tanu
 東京大学大学院薬学系研究科 Yeasmin MST Fouzia
 東京大学大学院薬学系研究科  孫 小寧

○事務室
 主査  吉泉 浩二
 庶務係 大杉 俊男
     大栗 真佐美
 会計係 増子 和子
     三浦 幸栄
 業務係 小坂 尚樹
     水野 利恵
     瀧上 由美
     酒井 理栄(短時間)